まさかアスランがこのフェンスの向こうに現れるとは思ってなかった。

トリィが飛んで行って、それを追いかけて。

工場の外へ出て行って…。

どこに行ってしまったんだろう…。

大切な…大切なものなのにって思ってた…。

だから必死に探してた。

そして、フェンスの傍までやってきて…、

視線を元に戻したら…、




彼が目の前にいた…。








































友達の為に…

守る為に…

憧れていた女の子の為に…



本当はそんなの重い枷でしかない…。



大好きな親友の言葉まで阻んで…

大好きな親友の気持ちまで捨てて…



僕はAAに乗り続けている…。

でも、一番に大切だったのは…

小さい頃からの幼馴染のアスランで…

自分を好きだと言ってくれた恋人のアスランで…



戦いたくなんてなくて…

心のどこかで彼とは戦わないと思っていた…。



できるならばずっと平和な暮らしを望んでいた…

小さい頃のように…二人で笑っていた頃に…






だけど…もう…戻れない……

人を殺してしまった僕だから…

銃を撃ってしまった僕だから…








それに僕は気づいていなかった……








「何が…?」



僕の言った言葉にフラガ少佐が疑問を感じ訊いてくる。

『今会ったら言っちゃいそうで嫌なんです』っと言う言葉に…。



「何で僕をコーディネーターにしたのって…。」



その言葉にフラガ少佐は驚いている。



親が何故僕をコーディネーターにしたのかは分からない。

でも、自分がコーディネーターでなければ良かったと今は思ってしまう。

ナチュラルであれば、友達との仲も拗れたりしなかっただろうし、

MSに乗る事もなかったし、傷つくこともなかったのかもしれない。



何で僕はコーディネーターなんだろう…。

もう人を殺したり、誰かに傷つけられたり、裏切り者だと言われたり、頼られたり…、

あらゆるものから逃れることができるのに……。








『トリィ!!』



突然トリィが飛び立ってしまった。

ここの工場の中で飛び回ったら大変な事になるのに。



「こら!!トリィ!!」



夢中になって呼び戻そうとするけど、トリィは空中へ飛んで行ってしまう。

フラガ少佐とそれを見つめる。



「トリィ!!」



トリィは工場の出口へと向かい、外へ出て行くようだった。

僕は慌てて追いかける。



トリィは彼からもらった大切な…大切なものだから。

僕の唯一の支えだから。

なくなってしまったら彼と繋がるものが無くなるから。



トリィが出て行った方へと必死に走って追いかける。

姿は今は見えないけど…。

手探りのように、必死に追いかける。









外へ出るととても綺麗な夕日が輝いていた。

何だか彼と昔見た空のようだった。



彼に会いたい…。

会って抱きしめてほしい…。

悲しい心を…悲鳴をあげている心を助けてほしかった。



一筋の涙が頬を伝ったが、それをすぐに拭い。

またトリィを必死に探した。




























トリィが大好きな彼の元に来ているとは知らずに…。












アスランはトリィを見て、まさか居るのか!?と思った。



『キラ…、居るのか…。君は…ここに…。』



アスランを襲うのはあの可愛かったキラの容姿…。

愛しげな恋人の姿…。



アスランの手の上でトリィは首を傾げた。

すると、フェンスの向こうから声が聞こえる。



「トリィ!!」



何度も何度も聞こえる、聞き慣れた今は敵である恋人の声。

アスランはだんだん近くなってくる声に顔を上げた。



(…キラ…?)



すると、工場の壁の裏からキラが現れた…。

空を見上げ、トリィを探している。



キラの容姿にアスランは身動き出来なくなる。

しかし、今行けば『何か』話せるかもしれない…。

そう思ってゆっくりと歩き出す。


















「あぁ…どこ行っちゃったのかな…。」



キラは正直途方に暮れそうだった。

このままトリィが帰って来なかったらどうしよう、っと。

だけど、アスランと繋ぐものが、自分を支えるものが無くなってしまうと、

余計に何だか今の自分が立っている場所さえ分からなくなりそうで…。



また涙ぐんでしまいそうな自分を必死に堪えてまた探そうとする。



だが、視線をフェンスの向こうに向けたとき、自分も身動きが取れなくなる。



『アス…ラン…?』



アスランはしっかりこっちを見据えてゆっくりと歩いてくる。

そして、その手に乗っているトリィを見つけるとキラもゆっくりと歩き出す。

互いにゆっくりと距離を縮めていく。

頭の中では今までの戦いや昔の思い出がぐるぐると回り続ける。



そして、フェンスの前までやって来た時、数秒沈黙が走る。

互いに何も言わない時間…。

だけど、その静寂を破ったのはアスランだった。



「…君…の…?」



その言葉に必死に自分を敵側の人間であること、

知り合いであること、

それらが他の人たちにバレないようにしてくれてることが分かった。



「うん…あり…がと…。」



ぎこちなくそんな言葉を言ってしまった。

手を差し出すとトリィが軽くジャンプしてキラの手の平に乗る。

それを自分の胸元まで寄せて顔を上げる…。

すると、アスランの碧の瞳と目が合った。

















アスラン…好きだよ…。

大好きだよ…。

例え立場が違くても…。

例え敵同士でも…。

僕の気持ちは昔と変わらないよ…。






だけど、何で僕は君の言葉に着いて行けなかったんだろう…。



でも、きっと嫌われるのが怖かったのかもしれない…。

君の友達を殺してしまったから…。

きっと君の中に少しでも憎悪があったら嫌だったから…。

ごめんねアスラン…。

心の中では君にずっと謝罪しているんだよ…。


















アスランの真剣な眼差しは未だにキラを捕らえたままだ。

アスランもキラに『愛してる』と言いたかった。

しかし、みんなの前でそんなことは出来ない…。



「おい!!行くぞ!!」



イザークが呼ぶ声が聞こえた。

アスランは行かなければと思った。

身を翻し他のみんなが待つ車へと向かう。

キラの姿を瞳を閉じて思いながら…。



「昔…友達に…!!」



キラの言葉にアスランは一瞬脚を止める。

そしてゆっくりとキラの方に振り向く。

キラは言いたくて、どうしようもなくて、顔を下に向けて瞳を寂しげにして、

アスランにどうしても1つだけ言いたいことを言った。



「大事な友達にもらった大事なモノなんだ…。」



キラはトリィを見直してアスランにまた視線を戻す。

アスランは目を逸らせなくなってしまった。






そしてまた二人の間に沈黙が走る。

しかし、イザークがまた催促をかけてきた。



アスランは行かなければと思う反面踏み止まってしまう。

どうしても…どうしても…っと思う。

アスランはイザークにちょっと待ってくれっと言い放つとキラに向きを直す。

キラは少し驚いたような瞳でアスランを見た。

アスランは他の皆に見えないように死角に立った。



「キラ…。」



アスランはフェンスの隙間から腕を伸ばす。

キラはそのアスランの腕に惹かれるかのように近寄る。

それから自分の手を差し出した。



「アスラン…。」



もしこのフェンスが無かったら、抱きつけたかもしれない…。

互いに泣いたかもしれない…。

そうアスランもキラも思った。



「キラ…君が傍に居ないのは正直悲しい…。俺にキラを撃つことなんて俺には出来ないから…。

 でも、例え今キラが敵でもずっと好きな事には変わりはないよ…。」



アスランはフェンスの隙間から愛しそうにキラを見る。

キラはアスランの顔を見上げ、少し泣きそうな顔をする。



「泣かないで、キラ…。俺はキラが生きていてくれることが重要なんだから…。

 いつか二人でまた幸せに笑える日まで、互いに生き残ろう…?」



アスランの言葉にキラはコクコクと涙を零しながら頷いた。

目尻を擦りながらキラはアスランの顔を見る。



「アスラン…僕もアスランが好きだよ…。僕も君とは戦えない…。

 だから、君には攻撃できない。でも、あそこには僕の友達が居るから、

 彼らが安全な所に行けるまでは僕は戦い続けるよ…。」



アスランは分かってる、と言う顔をして軽く頷いた。

キラの手を引き寄せて、軽く手の甲にキスを落とす。



「おまじない…。キラがこれから戦いになっても生きていられるように…。」



キラは嬉しそうに頷くと、今度はキラがアスランの手の甲にキスをした。



「じゃあ、僕からも同じようにおまじない…。」



二人が笑顔になると、アスランがもう行かなくちゃと言った。



「じゃあね、キラ。これからも君らを追い続けなくちゃいけないけど、

 平和になるまでは頑張ろう…。」



そう言って、アスランは待っている車へと走って行った。



キラはその姿が見えなくなるまで見送っていた……。


































この前までってかサイト新しくする前までは別バージョン入れてました。
しかし、リンク外しました。
またいつか自分の気が向いた時にリンク付け直しておきます。
まだ見てなかったのに〜!!って方も楽しみにしててください。
する時には告知を行います。






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