ここが閉鎖的な空間じゃなくて、
僕に自由があって、
この窓ガラス越しから見える、
あの青い空の下も歩けて、
ただ一つ望む、
あの人の傍にずっと居られたら…、
僕はどんなに幸せだろう…。
自由…
〜そこに自由があるのなら〜
『 いつもの何も無い、白い部屋…。
そこには、僕が一人でいるだけ…。』
白いベッドの上で、そんなことを考えているのは、
少し曇ったアメジストの瞳で天井を見ている『キラ・ヤマト』…。
「退屈…。」
ポソリとそんなことを呟いても、
ここに居るのは自分だけで、ただの独り言で終わってしまう…。
(今日で最後かな…。)
そう思うと、胸が苦しいばかりだ…。
ここは、本当に何もない、
生活する最低限の物が置かれた部屋だ…。
外から部屋のロックを掛けられ、
自分が部屋から出る事が出来ない場所…。
そんな部屋に一人ぼっちで居る僕は、
いつも、窓の外にある世界を見つめ続けている…。
青い空、
白い雲、
緑の木々、
そして、そこに生きる人たち。
そんなものに憧れを抱いて、どんなに望んでも、
キラには手が届かない世界である。
自分に自由が許されないから、
自分の意思で行動することが許されないから…。
しかし、最近、キラの退屈を紛らわせてくれる、
とても、幸せな気持ちになれる時間があった…。
ドアの前で、誰かが何か話していて、
すぐにトビラのロックが外れる音がした。
そして、その部屋に一人の男性が入ってきた…。
「イザーク!!来てくれたんだ。」
白銀の髪に、アイスブルーの瞳が印象的な男は、
イザーク・ジュールと言う名前の人物だった。
キラは素早く駆け寄ると、イザークに抱きついた。
すると、イザークは、
「どうした?そんなに待ち遠しかったか?」
と、少し驚いたような表情でキラを見た。
「…ううん…。ただ、イザークだけが、僕と話す事を許されてるから、早く話したかったんだ。」
そうキラが言うと、イザークはキラを抱きしめて、
「そうか、では、いつものように外の話をしてやろう…。」
穏やかな笑みでイザークは、キラの知らない外の世界の話をしだした。
彼は、唯一僕に接触を許された人物だった。
随分前に、僕が窓の外を見ていたら、
たまたま彼が通りがかって、僕と目があった…。
僕は、彼のアイスブルーの瞳に惹かれて、
一度でいいから彼と話してみたかった。
いつも来る人に、お願いをしたけど、
我儘を言う事も許されない僕は相手にされなかった…。
だから、諦めていた…、
そんな願いは叶わないのだと…。
でも、彼は現れた…。
どうやって話を付けたのかはよく知らないけど、
彼は、僕と話す事を許されたと一言告げた。
僕は、最初よく分からなかったけど、
『お前も俺と話したかったら、俺を見つめていたのではないのか?』
と、言われて、正直に頷いた。
彼の素性はよく知らないけど、
聞いた話によると、軍のパイロットらしいと言う事を言っていた。
彼にそう尋ねたら、
そうだ、と一言言われただけだった。
だから、彼の素性などどうでもいいと思った…。
この人は、僕に外の世界がどうなっているのか教えてくれたし、
すごく優しく接してくれたから…。
「今回は、こんなものにしておこうか…。」
そう、イザークが言うと、キラは、笑顔で、
「うん…。イロイロと話してくれてありがとう。」
と、言った。
そして、まだ一時間位時間があることに気付き、
「まだ…、帰らないよね?」
と、首を傾げて聞いた。
「あぁ…、じゃあ、少し一緒に昼寝でもするか?」
イザークは、キラをそっと抱き寄せて、
ベッドに一緒に横になる。
そして、キラを離さないように、しっかりと胸に抱き寄せた。
キラは嬉しそうな顔をして、
「おやすみ、イザーク。」
と、呟く。
「あぁ、おやすみ。お前が寝るまで俺が起きててやるからな…。」
イザークは、そう言うと、キラが寝るまでずっと起きていてくれた…。
一つだけ、我儘が言えるなら、叶えて欲しい願いがある…。
それは、絶対に無理な願いだけど、
出来るなら叶って欲しいと思う…。
それは…
30分程しか経っていないが、キラは目を覚ました。
辺りを見渡そうと思ったが、身動きが取れない。
なんだろう?と、顔を上げると、
イザークの寝顔のアップがそこにあった。
イザークは、規則的な寝息を静かにしている。
そして、その顔はとても綺麗だった。
(うわ…////すごくカッコイイ…////イザーク絶対女の人にモテるだろうな。)
キラは、体をずらそうとした瞬間さっきのように身動きが上手く取れないことを思い出すと、
キラは、やっと自分がさっきのまましっかりと抱きしめられている事に気付いた。
(どうしよう?腕退けたら、起きちゃうかな?)
ゆっくりと、起き上がろうとするが、
離すまいと抱きしめられている腕から上手く出られない。
いきなり、腕をどけたら起きてしまうのは簡単に思いついたから、
キラは、起こさないようにとかなりゆっくりと起き上がった。
「ふぅ…、起きれた…。」
そして、イザークの綺麗な寝顔を振り向いて見た…。
綺麗な銀糸の髪がシーツに広がっていて、
彼の人目を惹く容姿に魅了されるようだった。
そして、キラは、再度外を見渡すと、
この人と逢えてよかったと思った…。
そして、最後の別れと言わんばかりに、
こっそりと、イザークの頬にキスを落とした…。
(イザーク…、今日で…さよなら…。)
僕が、生きていられる最後の日に、
貴方と話せてよかった…。
僕の気持ちは伝えられないけど、
『貴方をずっと愛しています。』
出会ったときの偶然か、
一目で恋に落ちた自分…。
しかし、所詮、僕は『実験用の動物』でしかない…。
SEEDという特殊能力を持っているがために、
この何もない部屋での生活を余儀なくされた僕。
自由を許されず、
自分の行動を制御され、
鎖のようなもので繋がれていた生活…。
それも、もう終わる…。
だけど、その世界に新しい風を吹き込み、
僕に『恋』というものをくれた貴方…。
たとえ、今日実験の為殺される順番が来たとしても、
たとえ、貴方ともう会えなくなっても、
本当にずっと貴方を愛し続けています…。
だから、どうか自分の気持ちを伝えられなくても、
思い続けることだけはさせてください…。
それが、僕のたった一つの願い…。
本当は、一番叶えて欲しい願いがあるけど、
それは、どうやっても、叶わないものだから、
せめて、この彼への思いだけでも…。
思いつづけて居たい…。
ドアが開いて、研究者の人たちが入ってくる。
「時間だ。行くぞ。」
そう言われて、キラは立ち上がる。
「はい…。」
そして、立ち去って行こうとした瞬間…。
『ガシッ!!』
と、イザークに突然腕を掴まれた。
「イ…イザー…ク…?」
キラは、かなり困惑する。
「こいつは、俺のだ…。」
そう、獣のような目で研究者たちを威圧する。
しかし、研究者たちは少し怯んだものの。
「この子は実験道具なのですよ?どうするかはこちらに権限があります。」
と、はっきりと呟く。
すると…。
「時間だな…。」
と、イザークが突然呟いた。
キラはえっ?と疑問系な顔をする。
そして、突然たくさんの軍人らしき人たちが現れ、部屋に入ってきた。
「なんだ!?君たちは!?」
「こいつは俺が買った。」
鋭く、イザークが言い放つ。
「買っただと!?どうやって!?」
すると、イザークは、不敵な笑みを浮かべる。
「俺の母が、評議会の議員でな…。研究所の人間を一人買いたいとお願いしたのさ。
これぐらい買う金ならいくらでもあるし、母の命なら研究所の人間も簡単に諦めたしな。」
そうして、キラを横抱きにすると、
「こいつは、俺が頂いて行く。」
と、告げて、他の者たちと共に去って行った。
「あっ…あの、その…。」
キラが何かイマイチ自分がどうなったのか分からない表情をしているので、
イザークは、キラにもう一度説明してあげた。
「お前は俺が買った。今日からお前は自由だ…。」
その『自由』と言う言葉に、
キラは涙出た。
「もし…よかったら…、僕をずっと傍に置いてください…。」
キラは、必死にそう言った。
イザークは笑うと、
「もちろんだ…。お前を買ったのもお前を愛しているからだからな…。」
そうして、キラも、
「僕もイザークが好き…、これからも、ずっと好きでいさせてください…。」
イザークは、キラにそっと口付けをして、
永遠に離さないと誓う…。
そして、キラも、永遠に離れないと誓い、
自分の願いが叶った事を涙を流し感謝した…。
僕のもう一つの願い…、
それは、貴方の傍に永遠に居て、
ずっと、貴方を愛しつづけること………。
なんだか、長い上に、ちょっと暗めな話になっちゃった…(汗)
すいません…。
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