鳴るのはシャッターの音…

2度

3度

仕草を変えて写真を撮られる…



圧倒的な存在感…

普段とは違う艶めいた色気…



世界的に有名で

実力共に最高ランク

全世界の人間の憧れ



その世界でもトップにいる

世界最強の少年……






『シャウド・ヘヴン』













In the different world...
〜違う世界で〜






2人でいつものようにテラスでティータイムをしていると、
一本の電話が鳴った。


「もしもし?シャウドです。」


多分電話の相手は決まっている。


「あぁ、マネージャー。なんですか?」


シャウドが学園の仕事とは別にやっている、
『モデル』の仕事だ。


何やら手帳を見ながらいろいろと話している。
次の撮影の予定だろうか?


とりあえず、ゼウスは自分には関係のない事なので、
頼んだアイスカフェモカを飲む事にした。
マスターが丁寧に豆から挽いた味わい深いモカは、
冷たくしても更に美味しい。
いつもここで何度もおかわりしてしまう。


すると、シャウドの電話が終わったらしく、
こちらに視線を戻してきた。


「ごめんね、ゼウス。マネージャーいろいろとしつこくて。」

「いや、仕方ないさ。何てったって世界トップのモデル様だからな。
 予定もいっぱいいっぱいだろう?それを本職の仕事以外にしないといけないんだから大変だなお前。」

「いやいや、そんな事はないよ。
 まだモデルの仕事も始まったばかりだから、マネージャーも仕事のオファーいっぱい取ってきちゃうだけ。」


どうしようもないよねと言って笑うシャウドはとても大変そうだった。










シャウドがモデルを始めたのは、
シャウドが学園に戻ってきてすぐの事だった。


学園の生徒たちが何人かモデルとして起用されている会社で、
アイルが創設した新しい会社らしい、
そこで、シャウドが学園に戻ってきた早々、
シャウドをモデルに抜擢してくれないかと、
会社がアイルに直々に頼み込んだのだ。


アイルはシャウドが受けてくれるならという条件つきで頼みに行くと、
シャウドはあっさりとOKした。


最初は少しだけ戸惑ったらしいのだが、
頼まれると引き受けてしまうシャウドはすぐに了承してしまったのだ。






但し、1つだけ条件をつけて…
















「そういえばゼウスの方は撮影いつなの?」

「あぁ…しばらくはないかな…。」

「…また何かあったの…?」

「まぁ、いろいろ…。」






その条件とは『俺もモデルとして起用する事』だったのだ…。
俺のトラウマのリハビリを兼ねてという事もあったのだが、
シャウドは知ってる人が1人でもいないと嫌だとそこだけは譲らなかったのだ。


もしもその条件を飲まないのなら、
この仕事に関しては白紙という事になり、
俺は絶対に嫌だと言ったのに、
アイルに圧力を受け、
了承する事になってしまったのだ…。


ただ、俺にだけはいくつかの条件をつける事が許されていた。






「また、ポーズの事で何か言われちゃった?」

「…。」

「そっか…まぁ条件に含まれてるのにやっぱそうして欲しいって思う人は多いのかも…。」

「仕方ないさ。俺の条件はモデル生命を殺すものだ。」






ゼウスが出した条件というのが…、


『露出はNG、髪型は降ろさない、服の色は黒系』


というものだった。






それはモデルにとっては致命的だった。
しかし、受け入れてくれる人も居て、
特に俺についてくれたマネージャーはその事を理解してくれて、
条件を飲まない仕事は一切取らないようにしてくれた。


だからこそ、仕事は少ない。
大抵のカメラマンはそんな条件はないだろうと言って怒ってしまう。


その反面、
シャウドはどんな要求も飲む事が出来るし、
どうしても出来ないという事は、
カメラマンも納得してしまうように言い包める権力もある。


現に、
シャウドは雑誌に出た途端一気にトップモデルの座についてしまった。
その為、大抵の我儘という訳ではないが、
自分から指示出来るほどの権力を持っているのだ。


他にも載っているモデルよりも抜群に存在感があって、
いつも見ているシャウドの印象と違って、
それだけの魅力が存在するのだ。


そうして、シャウドのモデルという職業は、
男性の憧れの的となり、
シャウドのようになりたいと思って、
モデル会社に面接をしに来る人も後を絶たなかった。


雑誌の売上の方も鰻登りに急上昇し、
全世界で売上NO,1を誇るほどの人気ぶりとなのだ。









たった数ヶ月の間でここまで来ると正に、
伝説的な存在である。


シャウドは特に気にもしていないだろうが、
今やシャウドは世界的NO,1の美男子を欲しいままにしている。


彼女になりたいという女性も多いらしく、
会社には大量のファンレターやら、プレゼントが贈られてくる。


ただし当の本人は全くもらう気も見る気もなく、
俺の存在のみを気に掛けてくれているようだった。






「そういえばゼウス、雑誌載ったのっていつだっけ?」

「ん〜、少し前にお前の特集くまれてた雑誌の後ろにちょろっと載ったぐらいじゃね?」

「そっか…。」


シャウドは少し考え込むような顔になった後、
突然ぽんと手を叩いて立ち上がった。


「そうだ!!良いこと考えた!!」

「はっ?なんだよ突然。」

「それは数日後のお楽しみ〜♪」


シャウドはにこにこと嬉しそうに笑うと、
その後も上機嫌のまま過ごしていた。


















数日後、
俺はマネージャーから呼び出され、
あるスタジオへと向かった。


「な…なんだこれは!?」


そこにはとても大掛かりなセットと、
そこでいろいろと指示を出しているシャウドの姿があった。


「シャウド!?何してるんだお前?」

「あ、ゼウス〜。今日はよろしくね〜。」


突然の事に頭がこんがらがった。
するとシャウドが近くに寄ってきて手を引いてきた。


「今日は僕と一緒に黒服の特集ページの撮影をするんだよ♪」

「はぁ?」

「君黒服なら着れるでしょ?」

「いや…まぁ…そうだな…。」


俺はこの状況を飲み込めずにいた。


「シャウド?何で今日その俺と撮影になったんだ??」


疑惑の念を思いっきりシャウドに聞いてみる。
すると、


「あぁ、僕がゼウスと特集やりたいって言ったの。」


あっさりと答えやがった。


「あのなぁ…だからって何で…。」

「ん〜?だってゼウスが本当は凄くカッコいいって事もっと知って欲しいんだもん。」

「はっ?俺は別にどうでもいいんだけど;;」

「僕がよくないの〜。」


そう言って駄々をこねるシャウドにはお手上げである。
本当に全くこいつは何を考えているのやら。
俺の事なんてどうでもいいのに…。


所詮雑誌のモデルなんてくだらないものだ。
俺は服が目立って、売れてくれればいい。
それだけで十分だ。
自分も一緒に売れたいなんて思わない…。















そうこうしているうちに、
撮影の準備は整い撮る事になった。


黒服は一応好きな俺は、
衣装が並んでいるところを見て感動はしたが、
これからそれを着て何枚も撮影するのかと思うと、
正直恐ろしいものがあった。


「さ!皆!!撮影を始めよう!!」


シャウドの一声でスタッフやカメラマンが生き生きと返事を返す。
いつもの俺の撮影の時には感じない雰囲気だ。


「シャウドくん。こっちに目線お願いね。」


まずはシャウドからの撮影。
さすが…というべきだろうか。
完璧なポージング。
視線の強弱。
その先に居る、お客を考えて撮影に打ち込んでいる感じだ。


「んじゃ、今度はあっちのソファで撮ろうか。」


自分とは明らかに違う。
好きな様に出来て、
要望に答えられるシャウド。


見ていて居たたまれなくなった。


俺はこんな風には撮影出来ない…。






「ゼウス?」


突然シャウドがひょっこりと俺を覗き込んできた。


「うぇ!?お前突然沸くなよ!!」

「ぇ?僕の撮影もう終わったから戻ってきただけだよ?」


真剣に考え込んでいたせいか、
撮影が終わった事にすら気付かなかった。


「そ…そうだったのか。いやすまん。考え事をしていたから。」


シャウドから視線を逸らすと、
シャウドは何か気付いたようだった。


「緊張してるんだね。」

「え?」

「『僕みたいに』なんて考えなくていいんだよ?
 ゼウスはゼウスらしく写ればいいんだ。だって君は僕じゃないんだから同じ様には写れはしないさ。」


その言葉を聞いてハッとした。
俺はシャウドと自分を比較していたのだ。
その事に自分は愕然とした。


天才的なシャウド。
シャウドはシャウドであって、俺ではない。
シャウドと自分を比べるなんてどうかしてた…。


「あぁ、そうだな。すまない。」

「いやいや。仕方ないさ。僕はよく妬まれる性質だしねw」


にっこりと笑うシャウドには芯にしっかりとした強さを持っているようだった。
その存在が俺には眩しく見えた。


そして自分の番だと言う事に気合を入れた。
それから立ち上がると、シャウドが肩をポンポンと叩いた。


「大丈夫。あのカメラマンさんとは初めてだし、難しいだろうから、僕がやってあげるよ。」

「え?僕がって?お前が撮るのか??」

「もちろん!カメラの腕も僕は一流だよ?」


その不敵な笑みは正しく最強だった。















シャウドがカメラを向けると、
何だかとてつもなくリラックス出来た。


「ゼウス、かっこよく写ろうとしないで、自分らしく写ってみようか。」


そう言われて、いつもの部屋で居る時のような感じにしてみる。


「そうそう。そんな感じ。かっこいいよ♪」


周りからも熱い視線を感じた。


「じゃあ今度はカメラを睨んでみて、キレた感じじゃなくて、内に怒りを溜める感じで。」


今はシャウドの声とシャッターを切る音しか聞こえない。
静寂の中の2人の空間のようだった。


「んじゃ俯く感じで、その後見上げる感じ、そうそう、次は遠くを見る感じで。」


シャウドの声は優しく響く。
心を許した相手だからこそ、それを心地よく感じる。


気付いたら写真は全て撮り終わっていた。


「お疲れ様。休憩を挟んで衣装変えしたら、今度は2人で写る撮影ね。」


シャウドが肩に手を置くと、
俺はシャウドにしか見せない様に笑顔で笑った。




すると、シャウドはぽっと赤くなった。


「その顔が出来ればいいのにね。」

「あ?」

「いや、何でもない。そんな顔したら立ちどころに女の人にゼウスがもてちゃうよ。」


シャウドはその後若干膨れっ面になった。
俺ははにかんでハハッっと笑ってやった。













その後の撮影はシャウドと一緒だったから順調だった。
カメラマンのノリに乗っていて、楽しそうだった。


肩を組んだり、
違うポーズをお互い取ったり、
視線だけを交わしたり、
自分でもこれだけいろいろな事をやるのは楽しかった。


制限はあるのに、楽しい撮影。
こんな事は今まで味わったことのない感じだった。


撮影が全て終わった後、
周りから喝采が起こった。


「凄く良かったよ2人とも。」

「こんなに良い写真を撮ったのは久しぶりだ。」

「良いページになるよこれは。」

「またやりましょうね。」


周りのスタッフから沢山の声が飛んだ。
とても嬉しかった…。












数日後、
シャウドが販売される前に見本のページを持っていつもの喫茶店に現れた。


「ねぇ見てこれ!」

「ん?どれどれ?」


すると、なんと表紙からでかでかと2人で撮った写真が飾られていた。


「おい!お前!?これ!?」

「凄く良く写ってるでしょ?次のページも見てみてw特集で最初から半分は使ってるんだから!」


そう言われてページを捲ると、
相当数の写真が使われている…。


「なんでこんなに使ってるんだ??」


するとシャウドは不満そうな顔で。


「だって、ゼウス全部写りがかっこよかったんだもん。」


と、またまたはっきりと言った。


「特集とは聞いてたけど、表紙からのぶっちぎり半ページも使うなんて聞いてないぞ…;;」


全くという感じで俺は深い溜め息をついた。
こいつはちょっとがかなりでかいんじゃないか?


「雑誌は来週発行予定だから、どんぐらい売れるのか楽しみだねーw」


もう俺はがっくりと肩を落とすしかなかった……。


「しょうがない…。この落とし前はきっちりベッドで返してもらおうか…?」


ちょっとキレ気味でシャウドに言うと、
若干シャウドの顔が引き攣った。


「ぇ?マジで?これから・・・??」

「当たり前だ!今日はとことん付き合ってもらうからな!」


そう言ってシャウドの手を引っ張って引き摺って行く。


「えぇー;;これから仕事があるのにー;;」

「それよりも俺に付き合ってもらうぞ!この前はお前に付き合ってやったんだからな!」


シャウドは引き摺られがままににゃーにゃーと猫のように騒いでいたが、
そんな事はお構いなしに俺は部屋まで引き摺る。


今日はすっきりしそうな1日だ。
モデルの件で多少は頑張ろうと言う気にはなったが、
今度は別な意味で時間を割いた分を取り戻せそうだと俺は思った。












「うわーん!!誰か助けてー!!」


シャウドの声は誰にも聞き入れられず、
無情にも地下のゼウスの部屋の扉はしまった。


その後数時間。
誰もシャウドとゼウスの姿を見たものは居なかったという……。























たまには一息ブレイクしようと思って、
サブの話に2人のモデルの話を盛り込んでみました。
ちょっと楽な感じで、
2人を描けたのが凄く良かったデス。
また別のサブストーリーを違う機会にお楽しみに頂けたら幸いです。





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