まもなくやってくる平和の終わり…


きっと…


周りから見たら平穏な日々でも…


俺たち『3人』の中では穏やかではない…


顔は笑顔でも、


心はぐちゃぐちゃなのだ……




その地獄の日々は、

きっと少しずつ俺の中の何かを破壊し、

絶望していくのかもしれない…

身体につく傷よりも、

もっともっと深いところで、

心は傷付き病んでいく……




その先に残るものは、


平和か…


苦痛か……









Count down
〜迫る始まりの日〜






大きなカフェテラスの窓側の陽だまりの心地よい席に、
俺ゼウスと彼シャウドは座っていた。


いつものように笑いながら話し合い、
カフェのマスターの入れる挽きたての珈琲を飲みながら…。


「シャウドが学園に戻ってくるとやっぱり学園の雰囲気は変わるな。」


書類に目を通していたシャウドはふと珈琲に延ばしかけた手を止めて顔を上げる。


「え?なんで?」


まるで素知らぬ様子できょとんとしながらゼウスの顔を見つめ返した。
ゼウスはその様子にあんぐりである。


(こいつ…自分が世界でNO1の人気を誇る女性の憧れの存在だって分かってるんだろうか…。)


まぁでも、こいつにはそんな事は関係ないのかもしれないとゼウスは後々から付け足して考えた。
しかし、少しだけからかうように言っておいてやろうと、


「お前廊下で擦れ違う女の子とかに熱い視線送られてたんだぜ?w」


そう言ってやると、


「そう?全然気付かなかった。」


と、あっさりと返されてしまう。
ゼウスはどっぷりと溜め息を吐く。


まぁ、結局はこいつにとって特別な存在である『クラリス』さえ見てくれればどうでもいいのかも…。


そう思うくらいには自分は内心分かっているのかもしれない…。
こいつには周りの視線とか、
期待とか、
思いとかは眼中になく、
自分の考えのみが左右しているのだと。


自分が『親友』という枠に上手く納まっているだけで、
彼にとって唯一絶対なのはやはりクラリスだけなのだ…。


他の誰かでは埋められない隙間がきっとあるのだと…。











気落ちしているのも束の間、
シャウドがしばらく書類に目をやった後、
俺の手を引いて部屋へと連れて行った。


部屋に戻るなり書類はテーブルにほっぽり、
寝室へと引っ張っていく。


「シャウド?どうした?」


なんだか今度はシャウドが突然荒れ模様である。
少しだけ頬を膨らまして怒っている。


俺はすっかりちんぷんかんぷんである…。
すると…。


「ゼウスだって…。」

「ん?」


小さい声なのでよく聞こえない…。


「よく聞こえないんだけどどうした?」

「ゼウスだって女の子から熱い視線送られてたじゃないか!!」

「ぇ…。」


唖然…。
の一言に尽きる…。


シャウドがまさかそんなことを言うとは思ってなかった。
怒りに任せて次々と言葉が飛んでくる。


「廊下で擦れ違った女の子だって、本当はゼウス見てたんだよ!?」

「そうか?女の子シャウドのこと見て頬染めてたぞ。」

「違うよそこにもう2人ぐらい一緒に居たじゃないか!!そっちの子はゼウス見てたの!!」


全く何を言うのか…、自分が確かにNO3とか言われてるが、
結局シャウドのおまけみたいなもんなのは分かってるつもりだ。


何故にこんなに説教されるのかさっぱりである…。


「あのなぁテラスに居た時だって大半の女はお前のこと見てたんだぞ?俺はおまけだって…。」

「確かに僕にも視線来てたかもだけど、ゼウスだってカッコいいからって視線集めてたよ!!」


そしてこの言い争いは小一時間ぐらいかかる…。











「はぁ…はぁ…。」

「ぜぇ…ぜぇ…。」


言い合い過ぎてお互い疲れきっていた…。


「とにかく、分かったからごめん俺が悪かった。」


結局俺が折れた。
すると、シャウドも落ち着きを取り戻す。


「僕も言い過ぎたごめん。」


そうして、宥めるようにおでこに軽くキスを落としてやる。
謝りの意味を込めたものと、
けどお前の事を一番に思っているんだと言う意味を込めたキスを…。


そのまま今度は唇にキスをする。
何度も何度も…、
多分俺は愛を貪るように…。


愛しい愛しい君を思って…。


今だけは手元にある君の心を握り締めるように…。


シャウドもそれに答えるように愛を返してくれる。
なんだか、慰められるように…。


そうして、そのまま二人はゆっくりとベッドの上に倒れこんだ……。











シャウドはまだゼウスが寝ているのを見ながらぼんやりと考え事をしていた。
やはり、心の1番奥まで許せるのは『彼』だけなのだと…。


ゼウスの事は好きだ。


友人として親友として、
自分が今まで特別以外は許さなかった領域にゼウスの侵入を許したから…。


きっと君はその事などには気付いていないかもしれないだろうね。
自分は爪弾きに合う存在なのだと思いつづけるだろうね。
しかし、この事は本当だよ。
偽りではないんだよ。


でも、きっとその倍君を傷つける結果にはなると思う。
君に愛情も確かにある。
それでも…やっぱり僕が選ぶのは……。














早く…早く…

誰か彼を傷つける前に僕をなんとかしてください…

拘束しても

例え傷つけられても

僕をきっと止められはしない…

好きだよ…

でも利用してる…

愛してるよ…

でも心を傷つける…

そんな合判した心が…

自分を苛み続ける…





















ふと窓を開けて、
呪文を呟く…。


現れた小鳥に手紙を添える…。
これはきっと脅迫文…。


タイムリミットを設けた脅迫文…。
早く来ないとここに居る友達を傷つけるよ…。
そう言ってるような文…。


「さぁ、僕の大切な人のところにこれを届けて…。」


そう言って、小さな小鳥を見つめると、
小鳥はその翼を広げて飛び立った。


遠く遠く青白い朝靄の中を…、
砂漠の先に、
更にその先に、
ずっとずっと先に…、
僕の書いた手紙を乗せて…。






これで、きっと『彼』はやってくる。
僕達の均衡を壊さない為に、
それにきっと…。


僕達の愛はまだ繋がっているから…。


数日後には彼は到着するだろう…。
手紙が届けば直ぐに支度をしてこちらに向かってくるはずだから…。
僕らが再会したその時、どうなるのかはまだ僕には分からない…。




















その時俺は、隣で何かしているシャウドの動きを狸寝入りしながら聞いていた。
あぁ、遂に動き出したのかと…。


この先にあるのは地獄だと分かりきっている。
きっとこの幸せの終わりの瞬間だ。


ここからは人が人を騙し合う出来事になるのかもしれない。
多分きっと人の干渉の及ばない場所での心の戦い…。
表面上では平和な毎日、
心の内では騙し合いの毎日…。


ずっとずっと考えていた出来事が遂に現実となって押し寄せてくる…。
恐怖など山のようにある…。


でも、逃げない…。
例え裏切られても、
傷つけられても、
俺が二人の『親友』で居たいというのは変わらない…。


変わらないと思いたい…。


しかし、きっと俺の考えはまた変わる…。
人の思いや情熱は時の中でいくらでも変わる…。


きっと変わらない出来事があると言えば、
シャウドとクラリスがずっと愛し合う事のみ…。


つまり、俺の存在がここから居なくなろうとも、
必死にこの場所を守り続けようとも、
二人の愛は変わらない…。





















その翌日、その手紙を差し出した相手のクラリスは、
お供を1人と旅立つ支度に取り掛かる。


旅立つ時間は掛かろうとも、
もう動き出す事は決まったのだ…。


大切な親友と、
昔の恋人に思いを馳せて、
クラリスは遠き地の学園へ目を見据えた……。












さぁ…サイは投げられた…。


転ぶ先は天国か、


はたまた地獄か、


その先の出来事は、


きっと誰にも分からない…。


巻き込まれる人あり、


その出来事に気付かぬ人あり、


彼ら3人の物語は、


まだ始まったばかりなのだから……。













久しぶりのアカデミーのメインの物語です。
相変わらず暗いっす…。
しかしこの物語は元々暗いからしょうがないと諦め気味…。
でも笑い合う部分も要所要所置いてありますので、
執筆はてろてろしてますが、
少しずつ書いて行きたいと思いますw
ではでは、次回の話をお楽しみにw





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