淡い夢を見ているような感じがずっとしていた。
自分が描き続けた夢が現実となっているから。



自分の中にあった『願い』。
それが叶った瞬間から甘美なまでの猛毒を含ませた百合の手に俺は落ちた。



『一時の夢』であると分かっていてもそこに堕落したのは自分の意志だ。
なぜならそれまでに『シャウド』という存在が愛しかったからだ…。
そこまで渇望するほどの人物だったからだ。



あの時…出逢った瞬間から運命は決まっていた。
百合は高貴な薔薇を幾ばくもの鎖で絡めとり、
野に咲く桜はそれを黙って見ているしかないのだと…。
その出来事に変化は訪れず、
自分がその百合に触れることすら許されないのだと…。



しかし、現実は一時ながらも俺に触れる事を許してくれた。
その至福の喜びは自分の心を鋭利な刃物で抉るとも知らず……。







〜出逢い〜





俺たちの出逢いはまだ俺たちがとても幼い頃に入学してきた時だった。
俺、ゼウス・フォードが15歳。
クラリス・アイフルが11歳。
シャウド・ヘヴンが10歳であった。


シャウド・ヘヴンと言う名前は入学前から有名だったらしい。
あいつ自身はこんなの普通だよと言い張っていたが、
実際にあの世界的に有名で且つその存在が永遠に失われたと言われた『ヘヴン』家。
その跡取りであった少年が学園の入学テストを受け、
しかもその時の成績が超難関と言われるテストを満点合格した上に、
能力テストではどれも当たり前のように出来てしまったということで即入学が決定。
若干10歳という驚異的な年齢で人間国宝級に一気になってしまったのだ。


入学式から数日の間もやたらに取り巻きやファンクラブなどが居たぐらいだ。
当の本人のシャウドは興味がない為そんなことはどうでもよさそうだったが、
さすがに人前だけあって笑顔を絶やすことはなかったが、
隙を見せることなど微塵もなかった。
そのうちに取り巻きやらファンクラブは密かにしか行動しなくなっていった。


ちなみにクラリスの学園入学にも一騒動は起こった。
突然あのアイフル家次期頭首が現れ学園の入学テストに参加。
テストも難なくクリアし、能力テストでは家系の能力である暗殺術を医療の技として利用。
その事が理事長の目に止まり入学が決定した。
学園には家柄などは関係ないという理事長の意思は素晴らしいと俺は思った。


共に成績優秀で眉目秀麗で且つ文武両道とくればいくら何でも話題にならない筈が無い。
後に二人は本当に世界的規模で有名になっていった。
各国の国からも欲しいと言われている少年『シャウド・ヘヴン』と、
医療の天才と言われる『クラリス・アイフル』。
そんな二人とまさか俺が友人になれるなどと誰が予想しただろうか?
それこそまさしく必然でなければ出逢うことはなかったのだ。


なぜなら俺は自分自身の存在を人になど知られたくないが為に裏部門の入試テストを受けた。
能力テストで薬品の評価が買われたおかげで合格することができたし、
人に知られることなくほそぼそと入学してきたのだから。
だからその存在を誰が知ることもなかった。






あの入学式の日に運命的に出逢うことがなければ俺たちの人生が交錯することはなかったのだ…。







入学式の当日、俺は入学式をボイコットした。
はっきりといえばかったるいの一言に尽きる。
新しい理事長の就任が行われたり、生徒に学園生活について説明がされる中、
俺は1人で誰もいない学園の廊下を歩いてロビーに出たのだ。


その時、偶然にも他の場所から2人ほど別々の入り口から入ってきたのだ。
左の方の扉から金髪の長い髪の少年が入ってきて、
右の方の扉から同じく金髪だが短い髪の少年が入ってきた。


「「「?」」」


3人が3人とも驚いた瞬間だった。
まさかこの時間のこんなところにそれぞれの扉から同時に人が入ってくるとは誰も予測しなかったから。
でも本当に偶然のようで、運命的で、しかし必然のようにも取れる出逢いだった…。
俺たち3人は揃いも揃って入学式をサボっていたのだ。
だけど、3人とも何もないように通り過ぎることは出来なくて…、
誰もその場から動けなくなっていたのだ…。
お互いのことなど何も知らずに…階級とか容姿とかそんなことも関係なく…。


俺は自分は何故か口を開いていた。
何となくその2人に何か言いたかったから。


「…君らもサボり?」


自分がそんなことを言うとは思ってなかった。
でも適切な言葉など何もないような気がして2人にそんなくだらない質問を投げかけていた。
2人は驚いたように俺に視線を向けてきた。
そりゃあ当たり前だろう…。
全然知らないやつにお互いが言葉を探していたのにいきなりそんな質問をくらったのだから。
しかし、クラリスがその後こちらに顔を向き直して、


「あぁ…何かめんどくさくて。」


と、答えてくれたのだ。
すると、シャウドもこちらに顔を向けて、


「僕も…かな。」


と、答えてくれた。
でも今でも思う。
あの時2人は俺のことがどのように見えたのだろうか?
俺の第一印象はどんなだった?
そんな質問今更きっと聞けないだろうな…。


とにもかくにも俺の最初の発言が2人と会話ができるきっかけになったのは確かだった。
最初出逢った驚きはその一言で風のように通り過ぎたから。
だから話しを始めたのだ。


「2人は制服着てるから表部門の子なの?随分と幼いのに学園に入れたってことは優秀なんだね。」


そんな質問を次に投げかけてみた。
2人はまたも答えてくれた。


「幼いとかは関係ないんじゃないかな?ここは能力がある子は誰でも入れるからね。」

「そうだな。それにお前だって裏部門の人間なのに普通に表歩いてんじゃん。」


俺は2人が当たり前のように答えてくれる空気が嬉しかった。
この場に年齢や家柄やお互いの事情などは関係ないから。
だから…。


「なぁ、もしよかったら友達になってくれない?」


そんな言葉がついつい口から出ていた。


俺は自分に内心驚いていた。
自分から友達など絶対に求めないと思っていたし。
裏部門に入ったからには1人で孤独に戦って行こうと思っていたからだ。
自分の過去とかいろいろとあるから友達などめんどいとも思ってもいたし…。
だけど、自分から自然に求めていたのだ。


「いいよ。」

「俺も構わないけど。」


あの時、2人も友達ができるなどと思ってはいなかったのではないかと俺は思っている。
シャウドは入学試験の一件で周りから高貴な目で見られていたようだし、
クラリスは『アイフル家』の名前がついて回っていたようだったし。
まぁそれでもきっとあの2人にも自然に友達はいくらでも出来たとは思える。
しかしきっと、親友と呼べる存在は誰もいなかっただろう。







だけど、あの場でそれ以外にも様々なモノが交錯していたなどと誰が予測しただろうか?






俺はシャウドに恋に落ち、
シャウドはクラリスに恋に落ち、
クラリスはシャウドに恋に落ちた。


でも恋に落ちたと言うのは不適切かもしれない。
俺はシャウドに恋に落ちたけれどその後にシャウドの思いに気付く事になる。
シャウドはクラリスを愛し、底が見えない独占欲でクラリスを束縛するこになる。
クラリスもシャウドを愛し、愛しているからこそ、その独占欲の束縛から逃げる事はない。


俺はそれでも2人には感謝している。
実際に俺には友達が出来ることは無く、
信頼がおけるのも2人だけであった。
『親友』と言う関係だけでも十分だった。
その存在に感謝した。


こんなにも気の休まる場所と笑える場所を与えてくれたことに感謝した。
自分の中にある暗い部分を曝け出すことはなくとも『今』を明るく照らしてくれるから…。


例えみんなの中に様々なモノがあろうとも表面上では強く結ばれた関係だから…。
だから黒い部分が利用してこようとされようといいとも思えるのだ。
自分が傷付くことになろうとも…。









今は何も知らない状況……0からのスタートなのだ…。








まずはこの出会いに感謝しよう…。

それから言葉で会話をすることをして、

傷付くことを知り、

友を知り、

愛を知り、

背徳を知り、

裏切りを知り、




『闇』を知る………





















「…そういえば自己紹介してなかったな。俺はゼウス・フォード。裏薬品部門所属の現在15歳。」

「俺はクラリス・アイフル。医療部門所属の11歳。」

「僕はシャウド・ヘヴン。まだ所属部門は未定だけどこれから決まる予定。10歳だよ。」














まずは名前を知る事からが1つ目のスタートだ。











どうも茶碗蒸です。
今回は私が小説書きました。
3人の出会いを描きたくて書いたんですが、
話ごちゃごちゃで理解不能かもしれません…;;
とりあえず3人がこうして出会ったってことが分かればいいんですが…。
次回はまた物語の続き部分に行くと思います。
お茶漬けちゃんがたまには更新してくれるといいなぁ…。




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